半熟作家と"文学少女"な編集者

文学少女』シリーズ、これが本当に最後の1冊。タイトル通り編集者となった遠子先輩と、売れっ子だけど自信過剰なまでの強気な性格をした高校生作家・快斗のお話です。主役は快斗くんで、幾つかの話を通じて、遠子先輩への淡い想いを募らせていく...と言う展開。

とても面白かったです。凄く良い話だった!!
大人になった遠子先輩、少しは変わっているのかなぁと思ったのですが、相変わらず遠子先輩は遠子先輩でした。あまりの変わらなさに懐かしさと共にホッとした気分になりました。そして根っこにある本への愛情はそのままに、編集者としての顔もキチンと見せてくれます。快斗くんへの接し方、そしてもう1人の担当作家・早川緋砂へのアドバイスと遠子先輩自身の身の振り方に、作家と作家が良い作品を生む環境に心を砕く展開に、昔の心葉くんへの接し方を思い出したり。
さらに持ち前の天然たらしっぷりも存分に発揮。あっと言う間に快斗くんが惹かれていく展開にはニヤニヤが止まりませんでした。しかしその恋心が叶う事は無い事を知っている以上、どんな展開になるのか不安だったのも事実。なにせ快斗くん、挫折には慣れていなさそうだったし。でもそこは遠子先輩。伊達にヘタレ心葉くんを再起させた実績がある訳じゃない。快斗くんの成長っぷりが素晴らしかったです。

最初にタイトルを見た時は「半熟作家 = 心葉くん」かと思っていたのですが、読んでみれば心葉くんは名前すら出てこない勢い。快斗くんは井上ミウの事を思いっきり意識していて、ちらほらミウの名前は登場するぐらいでした。心葉くんはいつ出てくるのかなーと思いながら読んでいたら、本人が出てくる前に遠子先輩から爆弾発言が飛び出してビックリしました。あのヘタレだった心葉くんが!! 心葉くんがっっっっ!!!! アレを心葉くんがどんな顔で渡したのか、すっげー見てみたい。

そしてラストにはあの娘も登場。元気そうでなにより。成長すると言うのは変わるとはちょっと違う。元々の部分を残しつつ、より磨きがかかった面々の皆の未来が幸せでありますように...と思った、素敵な最終巻でした。大満足。