千の魔剣と盾の乙女

川口士の新作。
魔王に率いられた魔物に蹂躙された世界が舞台。海を渡れない魔物から逃げるため、人間は海沿いの都市を切り離し、大陸の周りを漂流するようになった6つの都市でのみ生活するようになった。主人公は魔剣使いの少年。2人の仲間と共に、魔剣の材料となる魔鋼を求めて大陸を冒険している最中、言葉を話す不思議な魔剣を見つけ...と言う感じに話が始まります。
面白かったです。とても手堅い作りのファンタジー。世界観がとても気に入りました。魔物に支配された世界で人間が一矢報いようと踏ん張っている設定が大変好みです。しかも主人公・ロックの夢は魔王を倒す事。誰も真面目に聞いてくれない途方も無い夢だけど、強い師匠の背中を追って己の信じた夢を貫く姿は普通に格好良かったです。
ヒロインは共にパーティを組む2人。男1人に女2人のパーティで、女の子2人は主人公への好感度が最初からマックス。1人はツンデレ、1人は世渡り上手。ツンデレ娘のエリシアが正ヒロインの模様。タイトルにある「盾の乙女」はエリシアの事で良いんだよね? あんまり盾が目立っていなかったので不安ですが...。ラブコメ要素はあんまり無くて、恋愛方面の展開は今後に期待です。1巻を通してかなり距離が縮まってたし。
そして主人公が手に入れた言葉を話す魔剣。この世界では魔剣はありふれているのですが、それでも言葉を話す魔剣は珍しい存在。性格的に戦う事を重要視し、パーティメンバーとは意見がぶつかる事があったりと、ある意味トラブルメーカーでしたが、決して高慢な訳では無く、彼なりに主人公の事を考えての行動。好感が持てるキャラで良かったです。
...しかしこの魔剣、名前は「ホルプ」で、しかも銀を吸収するような描写まであり、トドメには前の使い手の話がモロにあの人。前作『星図詠のリーナ』との微妙な繋がり方に、ちょっと興奮しました。話は全然繋がっていないので、この作品単体で普通に楽しめますが、こういう仕掛けはニヤリと出来る。
こんな感じで楽しい1冊でした。まだまだ謎も多く、今後の展開が楽しみです。