棺姫のチャイカ

榊一郎の新作。大きな戦争が終わったばかりの世界が舞台。主人公とその妹は、とある街の難民キャンプで暮らしていたが、ある日食料調達のために山に入った主人公が、棺を背負った1人の少女に出会う。直後、凶暴な棄獣に襲われてしまい...と言う感じに話が始まります。
何と言うか、本当に榊一郎の作品って安定しているなぁと言う印象が強かった1冊でした。不安に思える要素が何も無い。逆に突き抜けるような展開も無いのかな? と言う気分にもなるんですが...何にせよ、普通に楽しめると言うのは良い事です。今回は原点回帰? と言う事で、剣と魔法の正統ファンタジー榊一郎 & 富士見 & 正統ファンタジーと言えば棄てプリがありますが...あとがき読むと色々と書いてあって面白い。
主人公とその妹は乱破師。戦場に置いては汚れ役を引き受け、真っ当な手段では無い方法で敵を撹乱する役割を負っている存在。しかし長きに渡った戦乱の時代は終わり、今は戦後復興がメイン。乱破師として生きる術を失った主人公は働く気力を失っていましたが、チャイカと出会った事で、その生き方に変化が生まれます。
幼い頃から乱破師としての生き方を叩き込まれた主人公にとっては、戦乱の無い世界は平和かも知れないけれど、生き甲斐もない世界。争いを望む主人公と言うのは珍しいなぁと思いつつ、しかしその人生を思えば納得が行く所が良かったです。チャイカの護衛として雇われ、彼女のひたむきな思いに揺り動かされる展開も良かった。
魔術師であり、棺を背負って、自分の目的のために各地を巡ろうとするチャイカですが、彼女の目的は、戦後の時代から見れば世の中を再びかき回す恐れのあるもの。本人にその気は無くとも、周りが黙ってはいない。決して悪い事をしようとしている訳ではないのに、双方が歩み寄れる事はないだろうなぁと思うと、微妙に哀しい気分になりました。この先、波乱だらけだろうなぁ。
話はまだまだ始まったばかり。彼女の護衛をする事になった主人公達が、今後どんな旅を繰り広げるのか、楽しみです。