ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿

第15回スニーカー大賞・ザ・スニーカー大賞受賞作。
動いて話す猿のぬいぐるみ・サンジュと共に育った高校生の女の子・祭が主人公。サンジュの正体はその名を広く知られている大妖怪・火猿。この世界には、人間、妖怪《枷人》、機械生命体《マキナリア》が在り、マキナリアは枷人を殺した灰を摂取して動き、枷人は環力と呼ばれる力を養分として生きる。環力は人間や自然界にも存在するけど、マキナリアの身体が一番強く宿している...と言う設定。人間を間に挟み、枷人とマキナリアが対立する世界観の中、祭はマキナリアと枷人の争いに巻き込まれてしまい...と言うお話。
とても面白かったです。何と言う直球なお話!! 口の非常に悪いサンジュと、とてもドジだけど素直で明るい娘な祭。予期せずマキナリアの活動に巻き込まれた祭を助けるため、サンジュは祭の身体に憑依して、火猿としての力を振るう...と言う展開。凝った趣向や驚かされるような伏線は無かったのですが、ひたすら力強く進む王道展開が大変素晴らしかったです。
サンジュのツンデレっぷりと、それを分かった上でサンジュを大事に思う祭。この2人の関係が大好き。特にサンジュがとても良い感じ。口の悪さすら愛嬌に思えてくる。どれだけ態度や口が悪くたって、性根が腐ってなきゃ充分魅力的ですよね。口では悪態をつきながらも、祭の事は本当に大事にしている様子がアチコチで伺えて最高でした。火猿が何故猿のぬいぐるみを身体として祭と共に暮らすようになったのか、その部分が中盤に明らかにされるのですが、この時の火猿が最高。すげー良い奴と言う印象をガッツリと植え付けられました。
そして祭も良いキャラでした。ただサンジュに護られるだけのヒロインでは無く、自分から動き、時には怒り、感情豊かに話を進めていく所が良かったです。クライマックスではサンジュに劣らぬ迫力で敵に臨む。大事に思う相棒のために...と言う気持ちが痛い程伝わってきました。
バトルも盛り上がるし、キャラは立ってるし、話は外れの無い王道ストーリー。最初から最後まで楽しめました。話は綺麗に終わっているのですが、あとがきを読む限りでは続きが出るっぽいので、今から楽しみです。