伝説兄妹!

第1回『このライトノベルがすごい!』大賞・特別賞受賞作。
主人公は詩人を目指す極貧大学生。しかし才能は無く、働く気も無い...と言うとてもダメな大学生。食料調達の為に入った山の中で、1人の少女と出会う。彼女が書いた詩に、とんでもないまでの才能を感じ、行き場のなかった彼女を自分の家に連れて帰る展開。
ちょっと良い話としてまとまっているんですが、主人公がどうにも好きになれないのが辛い。曲がりなりにも創作に生きがいを感じた人間が、他人の詩を自分のものとして売りさばく、その金の稼ぎ方に後ろめたさをさほど感じていないのが、どうしても好きになれませんでした。
しかし、主人公は記憶の無かったデシ子を拾い、文明社会で生活に必要な知識を教え、養う。お金のため...と言う側面もあったけど、それ以外の側面も少なからずあったはず。確かにお金には汚いし傲慢だけど、決して優しくない訳じゃない。とても分かり辛いけど、仲間や家族に対する愛情は確かに持っていて、デシ子に対する態度が徐々に変わっていく展開は良い感じ。終盤、デシ子の正体が明らかになった後はとんでもない展開が待っているのですが、それでも彼女を家族とみなして奮闘する主人公はちょっと格好良かったです。また、デシ子の主人公を慕う健気さも良かった。素っ気ない扱いを受けてションボリしても、その後のフォローで満面の笑顔になる所がとても可愛かったです。良い子だ。
ただ、面白い所もあったんだけど、でも、だからこそ序盤の金稼ぎの部分が最後まで頭の片隅に残ってしまって、素直に喜べなかったんだよなぁ。読み終えて、何だか残念な気分になりました。