カッティング

第1回ノベルジャパン大賞・佳作受賞作。
リストカットを繰り返す少女と、自分の意識と行動のギャップに悩む主人公が出会う事から始まる青春モノ。
第1回ノベルジャパン大賞の受賞作の中では、これが一番面白かったです。
哲学的な悩みを持つ主人公の話って基本的に好きじゃない自分。この本を読み始めた当初は、主人公がそんな悩みを抱えているのを見て、「外れ引いたかも」なんて思ってたんですが...途中から全然印象が変わりました。
結構エグイ事情からリストカットを繰り返すヒロイン。自分の悩みを抱えつつ、とにかく冷静を装うクセに、ヒロインを放って置けない主人公。そんな2人が付き合う事になるんですが...すんごい不器用な恋愛をする2人が、読んでてとても良かったです。
付き合ううち、お互い仮面が徐々に剥がれていくのが良いです。特に初デートのシーンとか、ガチガチに緊張している2人は、傍から見ていても非常に微笑ましくて素敵な感じ。
全体的に雰囲気は暗いんですが、陰湿な感じが無かった事も面白く読めた一因かも。そのお陰か、終盤のヒロインの悲惨な事情を読んでも、あんまり鬱に入ることも無く、寧ろ読後感は凄く清々しかったです。表紙絵を見る限りでは、もっと暗くて救いの無い展開なのかと思ってたんですが...良い方向に裏切られました。
と言う訳で、かなり満足な1冊でした。次回作にも期待大です。