戦鬼 -イクサオニ-

第18回ファンタジア大賞・大賞受賞作。珍しく大賞が出たと言う事で、期待しつつ読了。
主人公は鬼と人の間に生まれた青年で、ある日、青年が住んでいた鬼の邑が人間によって攻め滅ぼされてしまう。捕らえられ、人間を激しく恨む主人公だったが、ある1人の少女と出会って...。
こんな感じのお話。ある取り引きのために渋々人間に従う主人公が、ヒロインである少女との交流を通して、徐々に人間への憎しみが薄れていく形で話が進みます。
流石大賞だけあって、これは面白かったです。特筆すべきは、日本神話と鬼が出てくる某昔話が合わさった世界観。最初は普通の和風なファンタジー設定かと思いきや、最初の敵を倒した辺りでビックリ。あの昔話のアレンジなのですが、これがとても上手く日本神話とマッチしていて、妙に感動してしまいました。
また、主人公とヒロインが良いコンビです。不器用な主人公と素直なヒロインと言う、ある意味王道な組合せですが...哀しい過去を持つヒロインが、主人公と一緒にいる事で、どんどん明るく前向きになっていくのが、読んでいて気持ち良かったです。腕輪のエピソードが良いよね。
しかしラスト、ラスボスが西洋めいた? 設定になっているのには、ちょっと面食らいました。最後まで和風を貫いても良かったんじゃないかなぁ。そう言えば、主人公の手足につけられている、呪文を唱えると重くなる枷。あれって、質量制御ではなくて重力制御だったんですね。クライマックスを読みながら、ふとそんな事を考えました。
シリーズ化しそうな終わり方をしているので、今後が非常に楽しみな新人さんですね。満足満足。