月の盾

『護くん』シリーズの作者、岩田洋季の読み切り作品。
主人公・暁は高校生。叔母が自殺し、残った一人娘を引き取る事になった主人公一家。実の母から虐待を受けていて、心を閉ざしていた桜花だったが、絵を描く事が大好きな彼女は、自分の絵が人に認められた事で自信を取り戻していく。しかし彼女の生い立ちには秘密があって...。
こんな感じ。素晴らしい才能をもつ天才画家のヒロインと、その彼女と共に暮らすことになった主人公を中心に、ヒロインの描く絵が世間に認められて評判になるに連れ、その過酷な生い立ちが明らかになっていく形で話が進みます。
これは非常に面白かったです。
ヒロインは主人公一家と共に暮らすようになってから、段々と心を開いていくんですが...全体的に暗い雰囲気が漂っており、彼女が得たのは薄氷の上の幸せと言った感じで、一歩踏み外せばそのまま不幸街道まっしぐらになりかねない設定。そして期待を裏切らず、幸せな生活から一転して不幸のどん底に。この先どうなるんだと、ワクワクしながらページを捲る手が止まりませんでした。
不幸のままに終わるような話だったら個人的にはアウトでしたが、そこは『灰色のアイリス』の作者。あの絶望的な展開の作品も最後にはハッピーエンドで終わった事だし、この作品も絶対最後はハッピーエンドになるはずだと信じて読んで、そしてその期待も裏切られない綺麗な終わり方に大満足。いやー面白かった。
この作品に登場する「絵」はどれもイラストになっていないのも好印象。作中で傑作扱いされている「絵」がイラスト等で映像化されてしまうと、どうしても興醒めしてしまう気がします。「絵」を題材にした話って、小説と言う形態が一番向いているんじゃないかなぁと思ったり。
と言う訳で、非常に満足な1冊でした。『護くん』シリーズの続きも、より楽しみになってきました。期待期待。