逆襲の魔王

今月デビューの新人さん・その1。第17回ファンタジア長編小説大賞<審査委員賞>受賞作です。
魔王を打ち倒した勇者・サラ。しかし彼女はその後、自らが魔王となって人間と魔物を統べる皇帝となり世界に君臨した。一方サラに敗れ、魔王としての力を失った元魔王・ラジャスは復讐を決意する。そして4年後、サラとラジャスは再び...。
こんな感じ。魔王に一目惚れした勇者と、その勇者に負けた魔王のお話です。
これは面白かった。魔王が勇者に復讐すると言う形で話が進みますが、復讐とは言っても恨み故のモノではなく、運命に抗い、己が信念を貫き通さんとするがため。一方の勇者も、魔王への恋心は皇帝となった身としては許されぬ道。互いに互いを認め合い、理解しあい、さらに惹かれあいながらも、決して馴れ合う事の出来ない2人の生き方の、なんと熱い事か。いやー素晴らしい。
ただ、お互いが相手をどれほどに思っているのか、と言う点が微妙に説明不足な感があったのが非常に残念。もう少し深く描かれていれば...と思わずにはいられませんでした。
そんな訳で、気になるところはありつつも、非常に満足な1冊でした。今後にも期待大ですね。ちょっと調べたら、発売中のドラマガ増刊号に短編が載ってるらしい。文庫になるかどうか分からんし、近いうちに読んでおこう。