七姫物語 第二章 世界のかたち 高野和 / 電撃文庫

約1年振りの新刊。あまりにも音沙汰が無かったので、出ないのかと思いましたよ。
舞台は『東和』と呼ばれる、大陸の一角。この国にある7つの主要都市が、死んだ先王の隠し子と称する姫を一人づつ擁立し、国家統一を目指していた。主人公の『カラスミ』はその7人の姫の一人だが、本当に姫であるわけではなく、天下を狙う武人『テン』と軍師『トエ』の2人によって担ぎ出された偽りの姫。この『カラ』の成長と言うか、生き様を書いたお話。
前巻から季節が巡り、今回は冬。雪に覆われ、どの都市も戦争どころではないため、この巻では大きな動きはありません。そういった意味では派手さに欠けるとも言えますが、この本の魅力はそこには無いので問題なし。
同時に賞をとった『バッカーノ!』がテンポの良さで押す作品ならば、これはゆったりとした時間の流れを楽しむ作品。個人的には『バッカーノ!』よりもこっちの方が好き。読んでてなんか不思議な感じがします。なんか透き通るような雰囲気が漂ってるんだけど、淡々と進むっていうのとはまたちょっと違う。...何言ってるのか分からんね。
一人称と三人称が巧みに混ざった地の文が素晴らしいです。この独特の雰囲気を醸し出しているのは、明らかにココ。本の厚さは普通なのに、読む時間が普段の倍かかったのは、地の文がしっかりしている証拠なのかな?
基本は一人称であるため、カラの思いや心境の変化なんかがダイレクトに書かれているのですが、これがまた。姫であるが故の大人びた雰囲気と、子供であるが故の歳相応な雰囲気。この2つを少女の視点から書いているあたりがとても良いです。ついでに言えば、登場人物はどれもしっかりとキャラ立ちしてるし、世界観とそれを支える設定がとてもしっかりと出来ていているあたりも良い。
そういえば、1巻と比べるとイラストが上手くなっている気がします。絵も作品に良くあってるし、普通に良作。まだまだ続く様子なんで、期待大。