”若紫” ヒカルが地球にいたころ…… 3

死んで幽霊となったヒカルの生前の心残りを晴らすため、主人公が奔走するお話の3冊目。今回のヒロインはタイトルの『若紫』が示す通り、まだ小さな女の子。見た目は儚げだけれども中身は相当にしたたか。自分の幼さを武器にして大人から金を巻き上げようとする程で...と言う展開です。

面白かったです。源氏物語では正妻の位置に収まる紫の上。光源氏と初めて出会う話が『若紫』で、今作ではどんな内容になるのかとても楽しみにしていました。紫がどんな子なのか? と思いながら読み始めたのですが、予想外のキャラでビックリしました。
生活が苦しくてお金が欲しくて、危険な橋でも容赦なく渡る尖った性格。でもそれでもやっぱり子供で、無理をすればいつかは簡単に折れてしまう、そんな危うさが常につきまとっている姿が痛々しく映りました。是光の事も犬呼ばわりし、脅迫のネタを用意して道具として使おうとするのですが...でもそこは是光。屈せず、間違った事は正面から叱り飛ばす姿が素晴らしかったです。
周囲の環境のせいで今のような生き方をするようになってしまったヒロインですが、是光がキチンと子供扱いした事で歳相応の振る舞いをするようになる展開が好き。辛い事も沢山あったけれど、やっぱり笑いたい時には笑って、泣きたい時には泣かないと。

しかし帆夏さん、影薄かったなー。前巻のラストで告白まがいの事までしたというのに!! 帆夏さんを応援している自分としては、今回は進展があるかと思っていたのに...。ぐずぐすしていたら更に一人ライバルが増える展開に頭を抱えてしまいました。次の巻、どうなるんだろう。