R.I.P. 天使は鏡と弾丸を招く

宝島社より献本頂きました。第2回「このライトノベルがすごい!」大賞・優秀賞受賞作。
鏡に映らず、また鏡の中を通って移動でき、さらに銃で撃たれても撃った相手が怪我をする。そんな不思議な能力を持った青年・フィリップを語り手として、父親の仕事のせいでマフィアに追われ、家族がバラバラになってしまった少女・アンジェリーナが、フィリップの力を借りて誘拐された妹を助けようとするお話。

とても良いお話でした。雰囲気とラストに残る余韻が大変良かったです。作品全体に漂う雰囲気は淡泊で、どこか薄暗いです。アンジェリーナの身の上は決して幸せでは無く、むしろ不幸のどん底。そこに現れたフィリップにすがるかのように寄り添う姿は少し痛々しくて。
また語り手の青年は、設定から分かる通り人間ではありません。そのせいか感情が希薄で、アンジェリーナの願いを最初は断ろうとする。でも気が付けばアンジェリーナの明るさと気持ちに、徐々に心動かされていく展開が良かった。。それでも淡泊な雰囲気は変わらないのですが、その淡々とした語り口調のなかに、ほのかに熱が感じられるようになっていく所が素晴らしかったです。
そしてラスト。この先どうなったのか分かりませんが、作品冒頭の独白と併せて考えると、何とも言えない気分になります。ジンワリと来る余韻が非常に良かった。満足です。
これは続きが出るような作品では無いと思うので、次回作? に期待。