灼熱の小早川さん

田中ロミオの新刊。主人公は新入生の男子高校生。腹黒いけれど表に出さず、高校では上手く世渡りして生きていこうと思っていた。しかし入学式から数日遅れて登校してきた女の子・小早川さんは違った。些細な校則違反も見逃さず、本人に注意するばかりか教師への報告すら躊躇わない。さらにクラス代表に就任してからはその勢いは増すばかりで、主人公は他のクラスメイトから何とかして欲しいとクラス副代表になるのだが...と言うお話。

凄かったです。読んでいて痛くて痛くてたまらない気分になる1冊でした。とにかくヒロイン・小早川さんの言動が物凄くて、何で...と思わずにはいられませんでした。灼熱の如き彼女の振る舞いの背景には、彼女の中学時代、クラスが学級崩壊してしまい、それを避けるためにあえて規則に厳しく振る舞っている、と言う事情があります。でも、そんな小早川さんの思いが他のクラスメイトに伝わるかと言えば...そんな訳は無く。一方的な物言いと振る舞いでどこまでも突き進んでいく小早川さんは当然の様に嫌われて孤立。他のクラスメイトとの緩衝材として入っている主人公のみが彼女の気持ちを知っている状態に。小早川さんも、主人公だけには優しい顔を見せる様になるのですが、その笑顔が切な過ぎて痛くて痛くて。
さらに生徒会長選挙に出ると言いだし、けどどう考えても結果は惨敗しか無い戦いに挑んでいく姿には、良いからもう何もするな休んで!! と言う気分になりました。あんんの上惨敗で、糸が切れたかのように大人しくなる姿は、もはや痛さを通り越して惨たらしい。
最後が何故かハッピーエンドっぽく収まって終わっているのがビックリでした。何で? と思わなくも無いですが、どんな形であれ救われてホッとしたよ...。小早川さんの灼熱はあくまでも虚勢でしかない。どれだけ情熱を持っていても、それが報われなければ燃え続ける事は出来ないんだなぁと思いました。主人公がいなかったらどうなっていた事か。怖い怖い。