ようこそ、古城ホテルへ

紅玉いづきの新作が角川つばさ文庫から発売。舞台は古城ホテル「マルグリット」。山を追われた魔女、諸事情により軍を追われた元軍人、亡国の姫君、そしてとある職業から足を洗った少女...の、性格も背景も違う4人の少女がマルグリットへと集められた。歳のため引退を考えているホテルの女主人は4人に、ふさわしいと思った人物に譲ると言う。実際に接客して相応しい事物を選ぶ事になり、4人はそれぞれ主人見習いとしてお客様を迎えるのだが...と言うお話。

4人の唯一の共通点は、帰る場所が無い事。自分の居場所が無く、だからこそこのホテルへと連れてこられ、でも主人に認めてもらえなければ、ここも離れなければならない。決して穏やかな状況ではありませんし、話も微妙に苦い雰囲気が漂います。でも、居場所のために...と、徐々に協力する事を覚えてお客様を迎えていき、気が付けば、ほんわかと優しい気分になりました。
居場所がある、帰る場所がある、と言う事が、如何に素敵な事なのか...と言う事を改めて実感させてくれる内容だったと思います。居場所と言うのは場所と言う意味だけでなく、周囲にいる人間の事も指すんですよね。最初はライバル同士だった少女たちも、いつしか仲良くなって。互いにかけがえのない存在になっていくんだろうなぁと思うと、自然と微笑ましい気分になりました。
また個人的には、普通の旅人だけで無く、異界からのお客様も迎えると言うホテルの設定が大好きです。どんな存在が訪れてくるのか...と思うとワクワクする。なんでもシリーズとして続くとの事。4人の成長と共に、どんなお客さんが泊まってどんなドラマが生まれるのか、そちらも楽しみにして待ちたいと思います。