バベル

第17回電撃小説大賞・最終選考作。日本が没落した近未来、マフィアに牛耳られた街が舞台。2大マフィアのボスの子供同士が結婚のはずが花嫁が何者かに誘拐。さらに英国女王の来日式典で献上するはずの美術品が盗難。幾つかの事件が平行し、いつしか絡み合っていく群像劇です。

群像劇は登場人物が多く、個人的には読み辛いジャンルなのですが、この作品は読みやすかったです。キャラがそれほど増えない上に、テンポ良くサクサク進むのが読みやすさの一因でしょうか。一応の主人公は、とある金持ち令嬢と彼女の家で働く元マフィアの少年の2人。しかし群像劇なので、他の登場人物にコロコロと視点が動いて話が進んでいきます。
誘拐騒動と美術品の盗難、と言う2つの大きな事件。最初は無関係だったのに徐々に2つの事件の登場人物が被っていくのですが...話の規模に比べてどうにも淡々と進んだ印象がありました。見えなかった所が視点が変わって見えてくる驚きが無かった。もう少しインパクトのある真相が読みたかったなぁと言うのが正直な所。一つ一つ着実に話は進むのは良かったのですが、意外に思えるような展開に出会えなかったのが残念。好きなキャラは多かったんだけど。シスターとか。リズとか。表面上はまともそうなのに、中身がアレ過ぎる。ギャップが良いよね。