奥ノ細道・オブ・ザ・デッド

舞台は元禄二年。突如として江戸を「おどろ歩き」と呼ばれるゾンビが蹂躙し、街が混乱する中、幕府の密命を受けて原因の探索へと派遣された松尾芭蕉。お供に知り合いだった女性の従弟の美少年・曽良を連れ、奥の細道を辿る旅に出る...と言う展開。
『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』。この凄いタイトルに惹かれて買いました。一体何をどう間違えたら、奥の細道とゾンビを組み合わせるのかと。まずは冒頭の漫画が物凄く良くて、読む前から期待大。イラストから醸しだされる雰囲気が素晴らしいです。一体ここからどんなとんでもない展開が待っているのか、ワクワクしながら読了。
話は松尾芭蕉のお供・曽良の視点から書かれるのですが、従姉との倒錯した関係から、突如としてその従姉を失い、少し病んでる様子が、とても作品にピッタリ。女装すれば、その衣装に沿った性格に変わるし...。芭蕉に振り回されながらも、離れる訳には行かないと付き従う所が可愛らしかったです。バッタバッタと人が喰われ、屍僕になっていく展開の中、このキャラの視点だからこそ、あまり暗くならなかったのかな...と思います。
そして松尾芭蕉。これが強い。半端なく強い。向かってくる屍僕をくないと怪しげな忍術で振り払い、しかもちゃんと詩も詠む。おいおい、この状況、詩を詠んでいる場合じゃないだろ!? と言いたくなるような場面でも、詠みたくなれば詠む。風流人は常人とは違うのか...と言う所を見せつけてくれます。松尾芭蕉が戦いに強い、と言う時点で何かが間違っている気がとてもするのですが、徐々に雰囲気に飲まれて気にならなくなってくるあたり、良く出来ているなぁと思いました。しかしあまりに強過ぎて、屍僕に襲われる恐怖、というものが全く感じられなかったのは少し残念でした。

終盤に行くに従い、徐々に屍僕が溢れるようになった理由が明らかになっていくのですが、決してすぐには全体像が明らかにならず、ヤキモキした展開。松尾芭蕉が何故戦える理由や屍僕が生まれた理由は明らかになるのですが、残りのページ数を考えると、結末がどんな形になるのか分からない。そんな中、最後まで読んだのですが。


...終わってない!! 終わってないよこれ!!


奥の細道がどこからどこまで、と言うのをキチンと把握していなかった事もあるのですが、全然道半ばだった...。てっきり1巻完結かと思っていたので、この展開にはビックリ。本当に続編が出るのかどうかは分かりませんが、ここで終わったら色々と投げっぱなしのような気が。出るのかなぁ、続き。