ひがえりグラディエーター

中村恵里加の新作。主人公は、幼い頃失踪した妹の無事を信じている高校生。突如現れた少女・アールによって、突如異世界へと連れていかれる。その世界では、地球人同士を戦わせるゲームが娯楽として普及していた。主人公はアールによってそのゲームに参加させられる事になってしまい...と言うお話。

面白いんだけど気持ち悪さの残る話でした。主人公達は異世界の娯楽のために強引に戦わされる。怪我はしてもすぐに治り、痛みも無い。主人公を選び、戦わせる事にしたアールの振る舞いは強引だけど横暴と言う程に狂っている訳ではなく、寧ろ理性的。
主人公自身も落ち着いた対応を取るので、徐々に最初に感じた理不尽さがいなされていく感覚があって、何とも言えない気分になりました。また、その異世界でのゲームの中で、失踪した妹の情報を知る所からは、徐々に気持ち悪さが増して行く印象。逃げ場がユックリと、しかし確実に潰されていく、不安の広がり方がキツい。

そして何よりキツかったのは、妹の友人で後輩のことさんの存在。主人公だけならまだしも、まさかことさんまで...。2人して見つけてしまった希望から目が離せない。絶望するには希望と救いが有り過ぎて、しかし楽観視するには厳しい状況。その中で、ことさんの浮かべる、明るく振舞っているように見える表情が痛々しくて見ていられませんでした。
今、見えている笑顔は、本当に嬉しいから、楽しいからと浮かんでいる表情では無く、諦めの中に見つけてしまった希望を前に無理に喜んでいると言うか、明るく振舞わなければ押し潰されてしまうから仕方なく笑っている、と言う感じがします。凄く心がザワザワとする笑み。これが無性に気持ち悪かったです。

凄い気になる所で終わっていて、どうしても続きが読みたくなるのですが、希望と絶望の狭間を進むような話に、自分は耐えられるのか自信が無い。シリーズが明るく終わる確信があれば別だけど、この作者なら有り得ないだろうし。どうしたものか。