喰 -kuu-

第6回MF文庫Jライトノベル新人賞・優秀賞受賞作。
主人公は肘を壊して野球を諦めた高校1年生。バイト先の叔父の食堂にある、1つのメニュー。それは30分で完食したら無料と言う特大のラーメンだった。バイトを始めてから、誰1人として注文した所を見た事が無かった主人公だったが、ある日、1人の少女が挑み、そしてクリアする。その姿に一目惚れした主人公は、その少女に交際を申し込むのだが...と言うお話。
設定が面白い作品でした。テーマは大食い、そして早食い。交際の条件としてみのりに出されたものは、「食神」と呼ばれる30人前の巨大ラーメンを制覇する事。物凄く困難な課題を乗り越えるため、高校で選んだ部活は大食いの道を進んだ人達が集う過食倶楽部。その部活での活動を中心に話が進んでいきます。
主人公は当初、特に大食いに興味があった訳では無いのですが、みのりが本気で食に挑む姿を見て、野球を諦めて燻っていた心が再燃。自分が本気で挑むものとして大食いの道を選びます。みのり本人に惚れた事も理由の1つですが、それ以上に本気になれる場所として、大食いの道を選ぶ展開が面白かったです。好きな人に近付きたいと言う気持ちと、一度は失った、自分が本気の本気をかけて挑める目標。この2つが重なったと来れば、それは全力を尽くして突き進むしか無いですね。愚直なまでに突っ走る主人公に好感が持てました。
ただ、ちょっと微妙な感じも。主人公が大食いにかける情熱が完全には理解しきれなかったと言うか、伝わりきらなかったと言うか。どうしてこの道に、そこまで本気で挑むのか? と言う部分に、物足りなさを感じました。主人公にとってはとても大事で揺らぐ事の無い目標だと言う事は分かるんだけど。自分が食に、それほど興味が無い人間だと言うのもあるのかも知れませんが...。