シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精

第7回角川ビーンズ小説大賞・審査員特別賞受賞作。
妖精を人間が使役する世界が舞台で、銀砂糖師と呼ばれる、超一流の砂糖細工師だった母と旅をしていた少女が主人公・アン。母が病気で亡くなり、1人で旅を続ける事を決意したアンは、銀砂糖師の資格を得るための大会に出るため、王都を目指す。道中の安全のため、護衛として妖精を買う事にしたが、買った妖精は美形だけどひたすら口が悪くて...と言うお話。
前回のラノサイ杯で気になった作品だったので読んでみました。ビーンズ文庫の本を読むのはこれが初めて。少女向け小説レーベルなので、普段読んでいる本とは毛色が大幅に違ってとても新鮮。主人公とヒロインの立ち位置を逆になっている感じなのですが、逆にするとこうなるのか...と言う驚きがありました。
亡くなった母の跡を継ぐため、健気に銀砂糖師を目指すアンですが、失った母への先走り、微妙に空回っているように思える必死さが切なくて良かったです。アンの護衛となった妖精・シャルは、人間の事を信用しておらず、アンの元からどうにかして逃げようと考えているのですが、話が進むにつれて徐々に心変わりしていきます。アンの妖精を使役するのではなく、友達になりたいと言う考えを、最初は否定していたのですが...あれだけ一途な娘についていれば、考え方の1つも変わるというもの。中盤から終盤にかけては、話の展開に非常に甘い雰囲気が漂っていて、もうどうしようかと思いました。
続編も出ているので、この甘さが恋しくなったら続きも読んでみたいと思います。