毒吐姫と星の石

紅玉いづきのデビュー作『ミミズクと夜の王』の続編。
とある国の姫として生まれながらも、占いにより不吉とされ捨てられた少女・エルザが主人公。口がとても悪く、開けば毒の言葉を吐く少女だったが、ある日、占いにより国に現れた凶兆を避けるため、国は彼女を姫として隣国へ嫁がせようとするのだが...と言うお話。
続編とは言え、世界観と一部のキャラが『ミミズクと夜の王』と共通なだけで、話としては独立しています。と言うか、『ミミズクと夜の王』を読んでいるはずなのに、キャラの名前とか全然覚えていなかったので殆ど初めて読むのと変わらなかった...。
姫として生まれながら、占いの結果で捨てられ、物乞いや盗みを繰り返して何とか生きてきたエルザ。愛情を知らずに生きてきた彼女が、強引に嫁がされたのは隣国の王子・クローディアス。嫁ぎ先へ行っても、隙あれば逃げ出そうとし、口を開けば毒を吐く。嫌われても当然...と言う状況の中、しかしクローディアスは見捨てない。エルザに優しく向きあいます。初めて触れる愛情に戸惑い、怒り、反発するエルザ。彼女の人生を振り返れば、いきなり愛情を注がれても反発するのは当然の事。でもそれにめげず、彼女に接し続けたクローディアス。自分自身、不自由な身体を抱えていて長い間幽閉されていたとと言う設定で、ある意味エルザと似た境遇にいた事もあって、何があってもエルザを見捨てない強さが光っていました。そして、その向けられた愛情に、エルザが徐々に刺々しさを失い、心を開いていく展開がとても素敵でした。
愛情って凄い。本当に凄い。そう思わせてくれる作品だったと思います。それまでの辛かった人生さえ、無駄じゃなかった...とまで気付かせる程。エルザがここまで変わるとは思わなかったなぁ。凄く良い話でした。満足。