断罪のイクシード

第2回GA文庫大賞・優秀賞受賞作。主人公は普通の高校生。街を騒がせている連続殺人事件に巻き込まれて死にかかるものの、転校生の少女・静馬の魔術で命を救われる。連続殺人事件の犯人を捕まえるために街へ来たと言う静馬を手伝おうと夜の世界へと足を踏み入れるのだが、静馬には冷たく断られてしまい...と言う展開。
主人公は熱血気味で直情的に見えつつそれなりに考える頭もあり、剣術を習っていて戦う力もそれなりに。結構な万能キャラの主人公が、魔術の世界へと首を突っ込んでいく。何と言うか、読んでいて幾つかの作品が非常に頭を過ぎったのですが...それでも結構熱くて面白く読めました。
完全に善意だけで動くキャラってどこか人間味が薄くて、例え話の展開が熱くても燃え切らず微妙な印象を受けるのですが、この主人公は普通に読めました。ヒロインの事しか見ていないからかな。作中では善意で動くヒーローみたいな事を言われていましたが、善意からと言うよりも、ただ単に気になる娘のために無茶をする、と言う感じを受けました。どう考えたって立ち向かうのは無茶な相手にそれでも挑んでいく展開に、主人公のヒロインを思う気持ちが乗っかって非常に良い感じ。やっぱりヒーローはヒロインのピンチに駆けつけないとね。しかも、単純な恋愛感情では無く、「仲良くなりたい」と言う気持ちなのが良かったです。シリーズとして続いていくと、その内恋愛に発展しそうだけど。
ヒロインも良かったです。普段は非常に冷たい受け答えしかしないのですが、それは裏返し。それまでの人生で、自分が作ってしまった殻。その中にある本心は普通の女の子で。一旦内面が分かってしまうと、凄く可愛く感じられます。エピローグが本当に素晴らしかったです。
と言う訳で、普通に満足な1冊でした。シリーズ化しそうな作品なので、続きにも期待。