変態王子と笑わない猫。

第6回MF文庫Jライトノベル新人賞・最優秀賞受賞作。
主人公は高校生。学校で「お供え物を捧げれば自分のいらないと思っているものを誰かに押し付けられる」と噂になっている「笑わない猫の像」に祈ってみたら、主人公から建前が失われ、本音が口からダダ漏れになってしまった。元々煩悩の強い主人公は、周りからは変態呼ばわりされるようになってしまい、同じく猫の像に表情と本音を奪われた後輩・月子と共に、奪われたものを奪回すべく奔走するのだが...と言うお話です。
面白かったです。とにかく良かったのはヒロイン達の魅力。鋼鉄王と呼ばれるほど堅い陸上部の部長、お金持ちのお嬢様を気取る梓、笑わない猫の像に表情と本音を奪われて無表情キャラになってしまった後輩・月子...と言う、それぞれタイプの違う3人が非常に魅力的に書かれていました。
梓と月子が主に話の中心なのですが、個人的には梓の可愛らしさがツボでした。表面上は物凄いお嬢様を気取っているんですが、実際はただ強がっているだけ。今の高校には転校してきたと言う設定なのですが、何故転校してきたか? と言う理由が切ない。
主人公から奪われた建前は、この梓の所に行ったのですが...全然強がれない性格なのに、建前が増強されて無理に強がり、奪われた建前を取り返す目的で近づいてきた主人公にちょっと勘違いしてデートの誘いに物凄く喜んで、でもそのデートは最後は散々なものになって。もう読んでて辛い辛い。しかし最後には本音が言えるようになって、それがそれまでのギャップもあってとても可愛らしかったです。
もう1人のヒロイン、こちらの話には鋼鉄王が絡んできます。梓の話の後に月子の話になったので、微妙に蛇足感を感じたのですが、月子の話にも決着をつけなきゃ話が終わらないのも確か。健気な月子の願いと想いが、奪われた表情のせいで分からないのはとても勿体無い。最後は元の鞘に戻るのかと思いきや、鋼鉄王があーなって、おいっ! と思ったり。真面目な人だと思っていたのに...。
こんな感じの1冊でした。これはシリーズ化するのでしょうか。笑わない猫の像が残っている限り、話はまだまだ続けられそうだし、ラブコメ的にも決着が着いていないし、是非とも続きが読みたいです。