神と奴隷の誕生構文 2

SFとファンタジーが良い具合に混じり合ったシリーズの2冊目。
舞台となる世界は、別の世界から植民地化されようとしていて、クルァシンはそれを阻止しようと、侵略されている世界のとある国の女王・セレィが大陸にある国々を同盟で一つにまとめる手伝いをする...と言うお話。今回は新たな国・アヌビシアと同盟を結ぶ形で話が進みます。
1巻は猛烈にアレコレ詰め込まれていて展開が早かったのですが、この2巻はそんな事は無く、1冊かけてジックリと話が進んで良い感じ。同盟を結ぶ事が主眼なので、大きな戦いは起こらず、外交努力で何とかする展開が良かったです。女王自らアヌビシアに赴き、最初は否定的だった相手の信頼を、その情熱で徐々に勝ち取っていく流れが良かった。
アヌビシアは国民全員が盲目で、音による伝達手段に長けた国。最初この設定を読んだ時は、どんな国なのか全く想像がつかなかったのですが...実際にその国に乗り込み、主人公達がアレコレ見た情景が何となく眼に浮かんで納得。どんな仕組みで成り立っているのか? と言う部分も書かれていたし。国の辺境から中心まで要所要所に特に耳の良い人を置き、音による情報伝達によって国防の要とする設定が、とてもこの国らしくて良かったです。
そして新キャラ・サーリャ。国で一番耳が良く、首都で全国から伝わってくる音を1人で聞き取る職につくのですが...この娘が切ない。人に決して言えない秘密を抱え、その秘密が故にまだ感じたことのない世界へ期待と夢を膨らませ、でもそれが叶う事は無い。どんな気持ちで生きてきたんだろう...と考えると、何とも言えない気分になります。でも、今回の件を通して、良い方向に転がったので一安心。世界は広い。その事実を身を持って知って欲しいなぁ。
と言う訳で、それなりに満足な1冊でした。続きにも期待。