ニーナとうさぎと魔法の戦車

第9回スーパーダッシュ小説新人賞・大賞受賞作。
主人公は12歳の少女・ニーナ。戦災により放浪せざるを得なくなったニーナは、ある日結婚式場で食べ物を盗もうとしたところ、見つかってしまう。捕まってしまう所だったが、そこに現れたのは1台の魔動戦車。この戦車に乗っていた女性の口添えで、許され、さらにはその魔動戦車隊で砲手を務める事になり...と言う展開。
とても面白かったです。戦後に残された負の遺産と戦う話の、その主人公が12歳の少女と言うのはそれだけで悲劇だと思いますが...冒頭がドン底で、そこからはい上がっていき最後は見事なハッピーエンドに繋がる展開が大変良かったです。
激しい戦争の果て、魔動戦車が無人で動き街を襲うようになった野良戦車。その野良戦車から街を守る私立戦車部隊・首なしラビッツに迎えられたニーナ。最初は戦車を恨み、大人を恨み...と、かたくなに尖っていましたが、首なしラビッツに迎えられてから、徐々にイキイキとしていく姿が良い感じ。途中にある野良戦車との戦いでは辛い展開も待っていますが、それでも乗り越えて、辿り着く先はハッピーエンドと言うのがホント良かった。
特に終盤の展開が最高でした。メンバー1人1人がニーナを迎え、「首なしラビッツ」と言う名前の由来を知る。この下りはグッと来ました。甘い考えでは生き抜けない戦車乗り。ドロシーの語った言葉は綺麗事かも知れないけれど、こんな世の中だからこそ、その生き様が輝いて見える。そう思いました。
そしてラストバトル。皆の気持ちが1つになり、死力を尽くして、強大な敵を相手に戦いを挑む姿がとにかく熱い。ラスボスが最後に情けなくなったのは「おいっ!」と思いましたが...でも気になったのはそのぐらい。エピローグもニーナの成長が一段と感じられて素晴らしかったし、とても満足のいく1冊でした。
しかし、この終わり方だと続きは出なさそうなのが残念。もう少しこの世界の話を読んでみたい。魔法の設定もユニークだったし。まぁ続きが出るにしろ、新しい作品が出るにしろ、次回作は期待大です。