ヴィークルエンド

うえお久光の新作。
先天的に感情を制御出来ない子供しか生まれなくった近未来、「サプリ」と呼ばれる補助剤を日常的に使って感情をコントロールするようになっていた。その中で、「ヴィークル」と呼ばれるサプリで自分の感覚を完全にごまかし、あたかも「乗り物に乗っている」ように感じさせ、夜中、町中を疾走する「ヴィークルレース」。高校生の主人公は、5人の仲間と共に、このヴィークルレースに身を投じていたが、ある日のレースで1人の少女と出会い...と言う感じに話が始まります。

物足りなさが残る1冊でした。レースものかと思っていたのですが、感情を自由に出来ない主人公達が、もがきながら自分らしさを見つける話だったように思います。あらすじを読んでレースものを期待して、どんな疾走感を味わえるのか? どんな熱いバトルがあるのか? なんて思いつつ、ヒロインが歌姫だったので、「レース」と「歌」と言うキーワードの組み合わせにロマンを感じてワクワクしながら読んでいたのですが、期待していた展開にはならず。完全に読み方を間違えた。確かにレースはレースでやってるんですが、主人公がとても理知的な感じで、レース中に解説めいた文章が入り、疾走感を削がれた気分...。
しかし、主人公は頭が良くて色々と考えて行動するけれど、感情が訴えてくるのはひたすらに「熱」。冷静さを燃やすような感情の熱さを持て余し気味で、でもレースを通して本当の自分に気づいていく展開は良い感じ。特に終盤、タイトルの「ヴィークルエンド」に込められたもう一つの意味を知った時は「凄い」と思いました。
最初から青春モノとして読めば、もっと楽しめたのかも。ちょっと勿体無かったかなぁ。