天空のリリー

表紙に目を惹かれて買いました。第二次世界大戦中、ソビエトに実在した女性エースパイロット、リリー・リトヴァグを主人公に据えた作品。女性だけの飛行機連隊の創設に際し、訓練校に集ったうら若き少女達が、訓練を通して一人前になっていくお話です。

飛行気乗りを養成する訓練校が舞台とは言え、卒業したら軍属になる事には変わりないので、厳しい訓練が待っているのかと思いきや、それほどでもありませんでした。軍の話としては、ちょっとアッサリ気味な感じ。規則が厳しくて締め付けられるところに反発する...みたいな展開があるかなぁと思っていたのですが、訓練校の先生自身が理解のある人で、寧ろ緩いぐらい。そう言った意味では少し拍子抜けしました。
しかし主人公のリリーは飛行気乗りとしての才能に溢れ、しかも空が大好き。そんな少女が、戦争の最前線から来たエースパイロットの教官に反発しながらも、相手の実力を認め、徐々に成長していく過程が素晴らしかったです。直情気味な主人公でしたが、それだけに真っ直ぐな性格で好感が持てたのも良かったです。基本的に空を目指す話ってポイント高いんですが、それに加えて主人公が良いキャラだったし、チームメイトとの友情話も素敵。実在したリリーと言うパイロットの事は全く知らなかったので、このお話がどのくらい史実に沿っているのかは分かりませんが、知らなくても普通に楽しめて良かったです。
しかし、彼女達の行く先には戦場が待っているんだよなぁ。その事実を忘れてしまうぐらい優しいお話だったんだけど、改めて戦場の事を思うと少し暗い気持ちになる...。彼女達は戦場に出る事をどう思っているのか、その辺の話はあんまり無かったと思うので、余計に気になっているのかも。どのキャラも良いキャラだったから、願わくば皆生き残りますように。