ヴァンダル画廊街の奇跡

第16回電撃小説大賞・金賞受賞作。
世界政府により「プロパガンダ撤廃令」が施行された近未来。戦争をモチーフとしたあらゆるものが規制され、かつての名画も発禁となった。そんな時代に、発禁となった絵をビルの壁面をキャンバスに巨大に描くアート・テロリスト《ヴァンダル》が現れ...と言うお話。

主人公は《ヴァンダル》の絵描きである少女。保護者であるサイボーグ・ハルクと共に世界各地の美術館を巡って侵入し、目当ての絵画を暗記してビルに描く。絵画をテーマに据えた作品ってあんまり無いので新鮮な感じはしたのですが、全体的に地味で、盛り上がりに欠けた印象が否めないお話でした。取り締まるインターポールとの駆け引きがアッサリしていて、何となく拍子抜けした気分です。また、ヒロインが父親の遺した絵を追い求める理由は分かるんですが、それとビルの壁面に絵を描く事が自分の中でどうにも繋がりませんでした。芸術家として、プロパガンダ撤廃令が納得行かないのは分かるけれど。
しかし、「人は誰もが、心に一枚の絵を持っている」と言うフレーズは凄く好きです。自分の中にもあるんだろうか? と、ふと思ったり。