ぐらシャチ

中村恵里加の新刊。
主人公は高校生になったばかりの女の子。散歩で出かけた浜辺で高波に襲われ、死にかかった所を匹のシャチに救われたが、そのシャチ、人語を理解し、話す事さえ出来て...と言うお話です。

面白かったです。最初の展開を読む限りでは、人では無いからこそ感覚のズレたシャチのグラと、ヒロインの、すれ違いつつもほのぼのとした異文化コミュニケーションが繰り広げられるのかと思っていたのですが、そんな単純な話ではありませんでした。徐々に暗い展開になっていったのにはビックですリ。ただのシャチじゃ無い事は明らかなので、一体どんな存在なのかハッキリしないままに起こる不可解な事件の連続は、ヒロインが不信感を募らせるには十分なキッカケだよなぁ。
一方のグラはヒロインに好意を向け続けてて、切ない展開...ではあるんですが、読んでいる自分としてもグラを信じて良いのかどうか判断がつかず、素直に楽しめない感じがしました。座り心地が悪いと言うか。時折漂う気味の悪さが、この作者らしいですね。ラストも綺麗にまとまっていて良かったです。

しかし最後のオチにはやられたなぁ。序章を読んだ時に感じた違和感は、このためだったのか...!!