アンシーズ 〜刀侠戦姫血風録〜

第8回スーパーダッシュ小説新人賞・佳作受賞作。

主人公は転校したばかりの男子高校生。新しいに初めて訪れた途端、美少女が剣を振りかざして戦っている場面に遭遇。そのまま巻き込まれ、自らも戦う事になるのだが...と言うお話。
これだけなら普通の設定なんですが、この作品はここからが凄い。この戦いに参加するキャラは「アンシー」と呼ばれ、男気みたいなものを使って武器を作り、互いに争うのですが...「男を抜いた」キャラクタはどうなるのか? その答えは「女になる」です。武器を抜いている間は肉体的には女性となり、しかも武器を壊されると「男が折れて」、二度と男に戻れないと言う設定。

とにかく斬新な設定が凄い。この男女の性別観は良いのか? と、微妙に疑問に思いもしたのですが、ここまで勢い良く書かれると、そうですか...としか言いようがありかせん。さらに女装趣味の美少年とか四六時中アンシーに変身しているキャラとかがメインキャストなので、読んでいて性別の概念が物凄い勢いで揺らぎます。TSはTSなんだけど、「性別変わってどうしよう」と言う展開は殆ど無くて、あるがままを受け入れているので、BLと百合と男女の恋愛、全てが同じキャラで違和感無く共存すると言う、何とも恐ろしい作品です。

しかし、主人公の意見がコロコロ変わるのは、読みながら「アレ?」と思いました。別にヘタレな訳じゃないのですが、周囲に流されやすいと言うか何と言うか。一度固めたはずの決心が簡単に揺らぐのは微妙に気にかかります。またアンシーとなって皆が戦う理由がイマイチ弱く感じてしまったのも残念。一応説明はあったけど、命がけで戦うに足るように感じられなかったんだよなぁ。

こんな感じの1冊でした。所々気になる所もありましたが、設定の凄さに押し切られる感じで楽しく読めました。シリーズ化希望。