1×10 藤宮十貴子は懐かない

かつては神童と呼ばれていたが、今は本気を出すのが億劫な男子高校生が主人公。子猫を助けようとした際の事故で死にかかっていた所を、同じ学校に通うヒロイン・藤宮十貴子に助けられる。明らかに致命傷だった主人公を助けたヒロインは魔法使いを名乗り、しかも何故か同居を迫られ、学校でも四六時中後をついてくるようになって...と言うお話です。

帯やあらすじに書いてある「今日から私はあなたの犬です」と言うキャッチコピーがやたらとインパクトがあったので読んでみました。魔法を使うには代償を払う必要があり、大きな魔法ほど大きな代償が必要。主人公を魔法で助けたヒロインが払った代償は? みたいな部分を核に、「世界一の魔法使い」を目指すヒロインとやる気の無い主人公のラブコメが中心の作品です。

主人公を助けたものの態度はひたすら冷たいヒロインが、何故主人公と行動を共にしなければならないのか? と言う部分に、彼女の払った代償がどういった類のものであるか、何となく想像がつきます。いきなり例のキャッチコピーから始まる訳だし。とは言え、変な上下関係があるわけでもなく、割合普通のラブコメとして進んで行きます。
訳アリのヒロインに振り回される主人公ですが、振り回されるだけでなく、キチンと文句を言う所が好印象。状況に流されるだけじゃないのは良い事ですね。ヒロインが真実を話せない理由を分った上で、それでも必要な事は話して欲しいと説得にかかるあたりは、「おぉ」と思いました。

面白い事は面白いものの、どこかひっかかる感じが最後まで拭えなかったんですが、読み終わって、自分は結局主人公が気に入らなかったんだろうなぁと思いました。昔本当に輝いて神童と呼ばれていた頃、多くの人が主人公の活躍に期待し感化されて。今はその輝きを失ってしまった主人公に、「どうして本気を出さない!」ともどかしさを感じる。そうした人たちが主人公を奮い立たせようとするものの、本人は背を向ける。けど本当にピンチになったら本気出す。この振る舞いがどうにも好きになれなかった模様。後、主人公すげぇ! と祭りたてる周囲も。確かに凄いんだけど...随分と主人公に都合の良い設定だと思わなくも無い。

こんな感じの1冊でした。微妙に肌に合わず。続きはどうしよう。