紫色のクオリア

うえお久光の新刊。多分1冊完結。
人間を含む、自分以外の生き物全てが「ロボット」に見えてしまう少女・ゆかりと、彼女のクラスメイトで友人の少女・ガクのお話。主人公はガクで、ゆかりとの日常生活から始まり、徐々に話が大きくなって...と言う展開。

これは面白かったです。全部で3話構成になっていて、最初の1話は導入? っぽい感じ。生き物がロボットに見えてしまうと言うゆかりの言っている事が、どう言う意味なのか、ちょっとした日常風景から教えてくれる展開。しかし、なんかホノボノしてて良いなぁなんて思いながら読めたのは最初だけ。すぐにとんでもない事になって、驚かされます。

また、その状況を踏まえた上で始まる2話目が凄い。何を書いてもネタバレになってしまうので書きにくいのですが...とある事情からゆかりを救うために、ガクが超頑張るお話。これだけ読むと、それほど突拍子も無い展開には見えないかもしれませんが、実際には「うわー」と言う感じの展開が続きます。重い展開で、ひたすらにガクがゆかりの事を思って行動する所に若干の怖さを覚えつつも、それでも面白かった。何より、一体どう言う風に結末を迎えるのか、全く予想のつかなかった所に惹かれました。1話を読んだ段階では、こんな展開になるとは全く予想も出来なかったし。

そして3話目。 短い一編でとても綺麗にまとまっているけど、2話目の展開を思って読むと、これは一体どう言う事? と思わせてくれます。ちょっと考えて、この3話目のタイトルの意味に思いを馳せると、なんとも言えない気分になります。切ない...。

と言う訳で、非常に満足な1冊でした。これ1冊で完結(だと思う)してるし、SF的展開が苦手でなければオススメ。