花守の竜の叙情詩

『紅牙のルビーウルフ』シリーズの作者の新刊。
とある島にある2つの国。お互い長年いがみ合っていたが、遂に片方が片方を征服。囚われの身となった世間知らずの王女と捕らえた国の方の第二王子が、第一王子の命で伝説の竜を探す旅に出るお話です。

これは非常に面白かったです。負けた方の国は実は圧政が敷かれていて、誰もがこの侵略を喜んでいる...と言う状況の中、本当に世間知らずだった王女はその事実を知って激しくショック受ける。そのせいもあって、最初は自暴自棄だったんですが、旅を続ける内に、少しずつ変わっていく様が良かったです。特に、道中追っ手の目を逃れるために連れる事になった少女・エレンの登場から、大きく変わった感じが。ヒロインが母親的立場になったからか、ここからとても強くなった印象を受けました。

変わったのはヒロインだけじゃなく、主人公の第二王子も。世間知らずなヒロインを最初は憎んですらいたけれど、徐々に気持ちが変わっていく展開がお見事。2人ともいがみ合っていたのに、旅のさなかで少しずつ大人になって、気が付けば互いが唯一無二の存在になっていく様が本当に良かったです。
また、基本的に国から追われるようにして旅に出たので、どうにも暗く、切なさが漂う展開ではあるんですが...それでいてラストがとても綺麗にまとまっているのが素晴らしい。最後の1行を読んでグッときました。この展開はズルい...。

と言う訳で、非常に満足な1冊でした。オススメです。