ダン・サリエルとイドラの魔術師

高飛車だけど音楽には真摯な神曲楽士・サリエルを主人公とした『ポリ銀』新刊。

個人的には、1話目と3, 4話目が気に入りました。1話目はスケジュール管理を失敗して落ち込むモモと、それを見て怒るに怒りきれないサリエルが良い感じ。彼女に神曲を演奏してあげていなかった...と言う負い目。原因の一端が自分にあると分かっていつつ、その理由が理由だけに、荒れるサリエルですが、最後にはキッチリと収まる。少しでもサリエルの役に立とうとするモモの健気さと、それを見て奮起するサリエルがとても良かったです。神曲演奏の下りからが特に最高。

3, 4話目は連作風味。アマディアの昔馴染・リジアがデビューしたは良いけれど、事務所との音楽性の違いから飛び出して、サリエルと会う展開。事務所のプロデューサーであり、サリエルのかつての相棒・シャルマが良いキャラです。表面上は仲の悪そうなサリエルとシャルマですが、音楽を違う方向から見ていると言うだけと言う感じがしました。考え方は違えど、相手の事は認めている。そんな関係が良い感じ。

話の軸にあるのは、芸術としての音楽と商売としての音楽。後者を押しつけられたリジアは前者を求めて、サリエルの元にたどり着くのですが...サリエルの感じているもどかしさが伝わってくるようで、凄く良かったです。情熱に燃えたリジアを前に、たとえそれが茨の道だったとしても進みたければ進め! と言わんばかりに示す態度が素晴らしいです。
これを目の当たりにしたアマディアはどうするんだろうなぁ。実力はあるのに、人前ではそれを発揮出来ない。焦るだろうし悔しいだろうけど、それでも挫けずに歩いて欲しい。

こんな感じの1冊でした。このシリーズはポリフォニカの中でもお気に入り。続きにも期待です。