荒野

桜庭一樹の新刊。ファミ通文庫から出ていた『荒野の恋』第1部と第2部をまとめて、さらに書き下ろしの第3部を加えた1冊。
一体どういう経緯でファミ通文庫の作品が丸ごと文藝春秋に移ったのか分かりませんが...何にせよ、無事に完結して一安心。面白かったです。
派手な展開があるわけでなく、ただ一人の少女が中学に入って卒業し、高校へ進むまでを書いただけなのに、何故かとても引きつけられます。文庫版で1冊1冊読んだ時と大分印象違うなー。一気に読んでしまいました。...1部と2部は既読だったけど、すっかり内容を忘れていたのは内緒。
浮気性な父親と、それを取り巻く女性達のドロドロした大人の生々しさがあり、荒野は荒野で恋をして、子供なりの生々しさがあって。特に荒野の方は、思春期の3年間が舞台なので、凄く成長が早い。話が進むに連れて、ドンドン変わっていく様が素晴らしかったです。
そんなドロッとした展開が続くわけですが...しかし後に引かず、読後感は結構スッキリ。これも良かった。終盤、あんまり楽しげじゃない展開が続いたので、このまま終わったらどうしようかと思いましたが、きちんとまとめてくれて良かったです。この物語が終わっても、荒野の日常にはやっぱり時々生々しい生活が待っているんでしょうけど、一山越えて、少しは落ち着くのかなぁ...なんて妄想してしまいました。
と言う訳で、普通に満足な1冊でした。無事に『荒野』は完結した事だし、そろそろ『GOSICK』も...。