クジラのソラ 01

去年の第17回ファンタジア長編小説大賞で、審査委員賞を受賞した瀬尾つかさの新シリーズ。
舞台は、圧倒的な技術力を持つ宇宙人の艦隊に無条件降伏した地球。宇宙人の要求はただ1つ、3人1組でチームを組み、艦隊を操って戦わせる『ゲーム』を行う事。毎年行われるワールドグランプリで優勝すると、宇宙人の艦隊へと招待される。この大会で優勝し、宇宙へと行った兄を追うヒロインが、仲間と共に試合へ挑むお話。
兄の後姿を追い続けるヒロインの雫が、天才メカニックの聖一と、その従妹で一流プレイヤーの冬湖をチームに迎え、試合に臨む形で話が進みます。結構面白かったです。
チームメイトと喧嘩をしながらも友情を深め、そして困難な対戦相手へ挑む。それまで過程で、メインのキャラそれぞれが各々味わう、挫折、緊張、興奮がストレートに伝わってきます。艦隊戦とは言っても、『ゲーム』なので基本的に人は死なないわけで、スポ根っぽい展開が多いのが良いですね。キャラクタたちの揺れ動く心境は、読んでいて熱くなります。
ただ終盤、『ゲーム』のプレイヤーの中でも稀にしか生まれない「アウターシンガー」と言う力に目覚める事で、強敵を撃破する...と言う展開は、ちょっと残念。試合後の対戦相手の興奮は凄く良かったけど、スポ根っぽい話の中で、この勝ち方はどうなんだろうと。己の力不足を実感し、努力して強くなる...と言う展開なら、より面白かったかも。確かに雫が自分で求め、気付いた果てに辿り着いた力だから、努力の結果なのは間違いないけど...それにしては、いきなり強すぎじゃね? と思ってしまいました。
さて、今後はどんなお話になるんでしょうか。ワールドグランプリで優勝してしまうと、宇宙へと旅立つ事になり、聖一とその他のメンバーは、おそらく2度と会う事が出来なくなってしまうはず。そんな、ある意味哀しい終わり方に向かって進むのか、それとも違う方向に進むのか。楽しみです。