ダークエルフの口づけ

ソード・ワールド・ノベルの長編。以前、ヘッポコーズの短編集に収録されていた、ファンドリアを舞台とした短編に登場したキャラクタが主役のお話です。
ヒロインは変身の魔法でエルフに姿を変えたダークエルフ。「混沌の王国」ファンドリアを舞台に、貿易商ギルドで警備主任の役についているヒロインと、その部下である人間の青年が、ある事件に巻き込まれる事で話が進みます。
半分ぐらい椎名優のイラストに惹かれて買ったのですが...お話も予想以上に面白かったです。なんか、自分のダークエルフ観が大幅に変わりました。前に出た短編では、ここまで凄いとは思わなかったのになぁ。
自分の中でダークエルフと言えば、真っ先に思い浮かぶのがロードス島ダークエルフ。それ故、血を見る事が大好きな粗野で乱暴者と言うイメージが強く、基本的にモンスター扱いされている事もあって、「凄い魔法が使える、頭の良いゴブリン」ぐらいに思ってました。それこそ、まともな意思疎通が出来るのは「私の陛下をかえせー」の人ぐらいしかいないものだと。
しかし考えてみれば、そんな訳ありませんね。ただ暴れるだけの種族なら、それ程恐れられる事も無かっただろうし、荒っぽい連中ばかりでは、ファンドリアが大国となる訳が無い。
この作品の主役であるベラは頭脳明晰で、任務に対してどこまでも冷静沈着で非情。ダークエルフが多くの種族に恐れられている理由が、良く分かった気がします。
しかし一番良かったのは、彼女が自分の部下に対して、ほんの少しだけ見せる親愛めいた感情。本心は全くといって良い程書かれていないので、本当にそんな感情を持っているのかどうか、読み終わっても確信が持てないんですが...この微妙さがホント素晴らしい。
と言う訳で、大満足な1冊でした。どうやらシリーズ化するそうなので、嬉しい限りです。続きに激しく期待。