エンジェル・ウィスパー

『埋葬惑星』でデビューした作者の第2作目。ハードカバーな1冊です。
主人公は三人兄弟の真ん中の高校生。長男はよろけたOLを庇って線路に転落して既に死亡。さらに父親の転勤で地方に引っ越した後、真面目だった三男が『エンジェル・ウィスパー』と言う単語を残して突然失踪。主人公は弟を探そうと色々調べ始めるが...と言うお話です。その地域に伝わる、古い神社の言い伝えと『エンジェル・ウィスパー』が密接に絡み合って話が進みます。
「現代サスペンス・ミステリー」と帯にありますが、このジャンル分けは良く分かりません。確かにサスペンス調な部分も、ミステリー調な部分もありますが、それは決してメインじゃない。
話の中心は、失踪した弟を助けようとする兄と、罪の意識と己の出生に悩み、生まれ変わる事を望んだ弟。さらに神社の巫女とその姉。救おうとする者と、救いを求める者。前者と後者のそれぞれが差し伸べた手の方向が違うため、全体的に哀しい雰囲気の漂う作品となっている気がしました。
作中、最初「エンジェル・ウィスパー」は麻薬っぽい正体不明の薬として扱われているんですが、終盤、この薬の正体が明かされます。しかし、そこでいきなりSFっぽい展開になったのが少々残念。普通の現代小説かと思って読んでいたので、唐突に出てきたSF設定には面食らいました。
そのせいか、終盤の盛り上がりがイマイチな感じが。ついでに言えば、家族の話をするなら幸せな終わり方をして欲しかった...と言うのは、自分の我儘なんですかね。
と言う訳で、あんまり自分の趣味にあう作品ではありませんでした。次の作品は、再び電撃文庫に戻るのかなぁ。