断章のグリム 1

『Missing』シリーズの作者、甲田学人の新シリーズ。
神の悪夢が泡として人間の意識に浮かび上がり、限界を超えるとその悪夢が<泡禍>と呼ばれる怪現象として現実化すると言う設定で、その悪夢に偶然巻き込まれた主人公が、とある少女に助けられる所から話が始まります。
童話とホラーの融合という、実に甲田学人らしいお話でした。今回のモチーフは「灰かぶり」。シンデレラですね。それも、ガラスの靴やカボチャの馬車が出てこない、"本当の"グリム童話が題材です。
童話をモチーフとした悪夢が現実化し、異常現象を巻き起こすと言う設定は、どことなく『Missing』に通じる所がありますが、話自体はそれ程似通っていると言う印象は受けませんでした。『Missing』の序盤のような、ぞっとするような怖さはなく、どちらかと言えば、気味の悪さが目立つ展開。読んでいて、微妙に気分が悪くなるぐらいの描写もあったりしましたが、それでも続きが気になるストーリーで、普通に楽しめました。特に、<泡禍>の核となっている部分を「シンデレラ」の話から連想していく過程が、謎解きみたいで面白かったです。
また、過去、神の悪夢に触れ、尚且つ生き残った人間の中には、<断章>と呼ばれる悪夢の欠片が残り、これを呼び起こす事で<泡禍>に対抗する力を得ると言う設定もなかなか。主人公とヒロインを始めとする登場人物たちはこの力を持っており、超常現象に対して同じ種類の力を持って対抗できると言うのが、『Missing』との一番の違いかも。
まぁなんにせよ、元々、神話とか言い伝えと言う類の話が好きな自分としては、「昔話」が毎回モチーフとなるこのシリーズには、かなり期待が持てます。続きが楽しみ。