狂乱家族日記 壱さつめ

日日日の新刊。第6回エンターブレインえんため大賞・佳作受賞作です。角川スニーカー文庫ファミ通文庫で、それぞれで日日日の受賞した作品が同時発売されましたが、これはその片方です。
超常現象対策局対策一課行動部隊長である主人公・乱崎凰火は、ある日通勤の途中で一人の少女と出会う。ネコミミとシッポを生やしたその少女の口の悪さに辟易しつつ、何故か目的地が同じと言う事で共に通勤してみると...上司から思いもよらない命令が。その内容は「お父さんになれ」...凰火の運命はいかに。
こんな感じ。すげー面白かったです。基本的には家族モノなんですが...「狂乱家族」と名乗るだけあって、家族構成がトンでもない。己を神と思い込んでいるとにかく口の悪いネコミミ少女に、悲惨な過去を背負った女の子、ライオン、生物兵器、オカマ、クラゲ。これに「父親」役の主人公を加えた「家族」が織り成すお話。
「母親」役のネコミミ少女・凶華がとても良いキャラで気に入りました。口を開けば罵詈雑言しか出てこず、自分の事を「凶華様」と呼ぶ、どこまでも自分中心に物事を考えるキャラなんですが...こういった「家族」ごっこには非協力的かと思いきや、かなり乗り気。所々で垣間見える、この家族と共にある生活を心から喜んでいる姿が、性格とのギャップもあって素晴らしいです。捻くれているけど歪んではいない性格、とでも表現すればよいんでしょうかねぇ。
彼女の過去を振り返れば、「家族」と言うか、人との触れ合いを求めていた事は分かるんですが、その過去を悲観する事なく今を思いっきり楽しむ姿勢がホントに良いのですよ。さらに、家族に害を成す者には容赦せず、敵を徹底的に排除すると言う考え方も、やっている事は過激だけど、登場人物の中では一番家族思いなキャラな気がしてなりません。いやー最高。
他の登場人物も、みんなしっかりキャラが立ってて良い感じ。今回は「長女」役の女の子と「母親」役の凶華と「父親」役の凰火がよく目立ってましたが、他のキャラも見せ場はちゃんとあるし、文章も上手い。言うことありませんな。
と言うわけで、非常に大満足な一冊でした。前に発売された、『ちーちゃんは悠久の向こう』『私の優しくない先輩』よりも、この作品の方がずっと好きです。あー続きが読みたくてたまらん...。この分だと、同時発売のスニーカーの新刊も期待できそうで楽しみです。