優しい煉獄

ちょっと前に発売された、『星界』シリーズの森岡浩之の新刊。
舞台はPC上に人格をコピーする事が出来るようになった近未来。生前の記憶を保存しておき、死後PC上で第二の人生を送る事が可能になった。昭和末期を模した世界の中、主人公の私立探偵が遭遇した事件をまとめた、連作短編集です。
こんなお話。ハードボイルドな雰囲気を楽しむ感じでしょうか。派手な展開は全く無いものの、設定もキャラもしっかりとまとまっていて、結構面白かったです。人格をコピーしてPC上で再生するという設定は良くありますが、それに加え、その世界に存在するためには維持費を管理会社に払わなければならず、お金が無くなれば、容赦なく第二の死が訪れてしまうので、生前に蓄えが無い人は、自分の命を稼ぐために、仮想現実な世界の中で仕事をする...と言う設定はちょっと新鮮でした。ありきたりな設定でも、一ひねり加えれば充分に魅力的なものになるんですなぁ。
と言う訳で、『星界』シリーズの続きも読みたいのですが、これはこれで良かったかと。しかし、この話はまだ続くんでしょうかね。内容的には、続いても終わってもおかしくない感じでしたが...。