カスタム・チャイルド

『キーリ』の作者である壁井ユカコの新作。
遺伝子操作が一般に普及し、生まれてくる子供の外見・性格を親が自由に決めるようになった現代が舞台。主人公の大学生・三嶋はある雨の夜、一人の少女と出会う。いかにも訳ありな雰囲気の少女から一晩泊めて欲しいと頼まれ、その夜は泊めてあげた三嶋。しかし結局一晩では済まず、そのまま少女は三嶋の部屋に泊まり続け...。
こんな話。内容的には、シンミリとした切ない話です。無気力な主人公と、突如として主人公の部屋に居つく事になったヒロインの不器用な接し方がとても良かったです。また、どことなく寂しげな雰囲気を漂わせつつ淡々と進んでいく辺りに、壁井ユカコの本なんだなぁと当たり前の事を改めて感じました。淡々と進むだけに、序盤から中盤はちょっと退屈な気もしましたが、話の真相が明らかになる終盤は割と盛り上がって良い感じ。
しかし、この終わり方には少々納得が行かない。多分ハッピーエンドなんだろうとは思うけど...そうは思いたくない。確かに主人公とヒロインは報われたと捉える事も出来ますが...それは少し違う気がする。救いの無い話の中、主人公とヒロインのぎこちない触れ合いが結構気に入っていただけに、「これで皆幸せですよ」のような結末は個人的には素直に受け入れられませんでした。読んでいて悲しくなるのは、それだけ話にのめり込んでいると言う事ですが...こういった暗めの話は肌に合わないんだろうなぁ。
と言う訳で、それなりに面白かったけど納得行かない部分もあった一冊でした。あとがきを読む限り続編もあるようですが...次はもっと明るい話だといいなー。