奇蹟の表現

第11回電撃小説大賞・銀賞受賞作です。
主人公・シマはかつて、裏組織を束ねていたが、とある抗争で家族を殺され、自身も重傷を負い、全身をサイボーク化することで何とか生き長らえていた。ある日シマは、修道院で復活祭の準備を手伝う仕事をする事になった。しかし院長から、修道院に隣接している児童養護施設で、子供が攫われるという話をされ、修道院の門番も兼ねる事になったのだが...。
こんな感じ。過去を背負った男・シマと、修道院で出会う一人の少女・ナツの二人を中心にして話が進みます。話自体は、結構好みの内容で気に入りました。淡々と進む感じで、それほど盛り上がると言う印象は受けなかったのですが、全体に漂う静かな雰囲気がお気に入り。また、不器用な性格のシマと、ずけずけと話すナツの交流は読んでいて面白い。特にシマが良い味出してます。この2人の話がここで終わるのは少々勿体無い。是非とも続きを読んでみたいです。
ただ、「?」マークを使わなかったり、「一、二時間」を「一二時間」のように表現している場所があったりと、ところどころ読みにくい個所が。どれも文脈から判断すれば分かる事ですが、それでも分かり辛い事には変わりなく。この2点は作品全体を通して徹底しているので、多分作者のこだわりなんだろうなぁ。読み返してみると、「!」も一度も使われて無さそうだし...。まぁこのこだわりが、全体的に静かで、どことなく哀しげな雰囲気を作るのに一役買っているんだと思いますが。
今回の電撃小説大賞受賞作の中では、これが一番好きな気がします。次の作品にも期待。