ジェスターズ・ギャラクシー 3 愚神どもには安息を 新城カズマ / 富士見ファンタジア文庫

予定通りに新刊が出てちょっと驚き。てっきり延期されるもんだと思ってました。
いやいや、予想以上に面白くて大満足な内容。前にも書いたけど、この作品の舞台は銀河全体を支配する帝国で、主人公達はその皇帝に仕える騎士たち。んで皇帝は、前皇帝が暗殺されて急遽即位が決まった女の子で、騎士の一人と恋仲気味なわけです。
この設定だけだと割とよくありそうなものなんだけど、一つ重要な要素として、この帝国が数年後には崩壊し、共和制にとって変わられることが決定していると言うことがあります。歴史的な史実に基づいてそれを振り返る形式で話が書かれているので、最後が悲劇で終わることが容易に想像できる。主人公達の頑張りが報われない事が分かっているだけに、その活躍が読んでいてとても切なくなる。キャラクター達が魅力的な分、よけいにね。
歴史が先に決まっている作品と言うと、真っ先に『ファイブスター物語』が頭に浮かぶんだけど、この2つの歴史の差は、「誰が歴史を記したのか」に尽きるかと。『ファイブスター物語』の方の年表は、言ってみれば神が記したようなもんで、そこに書かれている事は紛れも無い事実。時がくればその事象は必ず起こるわけだけど、『ジェスターズ・ギャラクシー』の歴史は、あくまでも人が記したもの。しかも年表のようなものがきちっと存在しているわけではなくて、話の所々に史実が記されているわけです。
要は何が言いたいかっていうと、人が書いた歴史は本当に正しい事実を記しているか分からないと言う事。『ファイブスター物語』とは違って、その歴史が真実を語っているかと言うと必ずしもそうは言い切れないって事です。
帝国は滅びて、騎士達も死に絶えた。帝国と共に皇帝も同じ道を歩んだ。しかし本当に騎士達は死に絶えたのか? 本当に皇帝も同じ道を歩んだのか? こう考えると予想される悲劇的な結末の中に、わずかばかりの希望が持てる。安易なハッピーエンドはあまり好きではないけれど、それを願わずにはいられないぐらい、キャラクター達が魅力的なんですよ。カッコ良すぎ。
うーん、読んだ事のある人にしか判らないような文章だな。あんまりまとまってないし。しかし自分的にはかなり好きな作品なんで、ちょっと語ってみました。
ところで、狗狼伝承の新刊はいつ出るんだろう...。