オカルトリック

『ファンダ・メンダ・マウス』の作者・大間九郎の新作。狐憑きの少年・玉藻と、その玉藻を溺愛している安楽椅子探偵の葛乃葉。2人で営む探偵業、そこに舞い込んできた依頼は、とある学校の女子寮で起こったボヤ騒ぎ。火の気のない所から突如発火すると言う事件の調査のために、玉藻が女子寮へと派遣されるが...と言う感じに話が始まります。

面白かったです。淡々としていて人間味の薄い玉藻と、感情豊かに玉藻を愛する葛乃葉。正反対の2人が組んで、オカルトの匂いが漂う事件へと向かいます。ぱっと見た感じ、ミステリっぽい雰囲気がありますが...読み終わってみればミステリと言うよりも歪んだ人間模様が凄い1冊でした。前作に比べて文章がとても読みやすくなっていて、あの歪んだ雰囲気はどこへ...? とちょっと不安になったのですが、それは序盤だけ。キャラクタや話の展開は、良い感じに歪んだ雰囲気が漂っていて良かったです。
特に、玉藻と葛乃葉の2人の関係が凄い。最初は葛乃葉が玉藻を溺愛している事しか分からないのですが、読み進めて2人の過去が徐々に明らかになるに従って、そこに隠されていた真実に衝撃を受けます。何か隠されているなぁとと思いながら読んでいたのですが、まさかこんな形だったとは。全部を分かってから思い返して、2人の関係に納得がいくと共に、その穏やかそうで穏やかではない依存関係にクラクラさせられました。
しかし、どれだけ関係性が歪んでいたとしても、そこには愛しかない。やっぱり愛を書く作家さんですね。溢れんばかりの愛情が、作品のあちこちから噴き出しているように思えます。事件の調査を進める上で知り合ったヒロイン? のイソラさんも、ちょっと愛情深いけど常識人だと思っていたのに...最後の最後でやってくれたしな!!
こんな感じの1冊でした。続きはイソラさんが話の中心...と言うか、黒幕になるのでしょうか。物凄い勢いで話が拗れそうな雰囲気があって、今から楽しみです。