グロリアスハーツ

淡路帆希の新作異世界ファンタジー。主人公は相方の少女・ユズカと運び屋を営むの少年。ユズカは一見普通の人間に見えるが、その正体は軍に作られた人造兵器・贋人だった。運び屋を営みつつ、ユズカを人間にしたい、と、贋人の研究者である人物を捜す日々で...と言う感じに話が始まります。

面白かったです。コメディシーンが多く、軽いノリのファンタジーかと思いきや、時々顔を覗かせる重々しい設定が光って良かったです。氷を操る能力を持つユズカと、人間なのに何故か炎を操る力を持つ主人公。正反対の力を持つ2人ですが、兄妹のように仲が良く、読んでいて優しい気分にさせてくれました。2人が危険な橋を渡っていく理由は、「人になる」と言う目的のため。この理由の真相は相方と共に生きるためと言うのも良かったです。
また、主人公達の運送屋にはもう1人、贋人の仲間がいたけれど、贋人は軍に狙われており、殺されてしまったと言う設定。このエピソードが要所要所で話を引き締めてくれるように思いました。思い返せば思い返すほど哀しい過去だけれども、決して忘れてはいけない、忘れられないもの。3人が仲良く暮らす世界が訪れれば最高なのですが、その未来は永遠に来ない。そう考えると、無性に切なくなってしまう。どうにかして生き返る展開は無いのかなぁ。伏線を考えると、ひょっとしたら? と言う予感もほんの少しあるんだけれど。
こんな感じの1冊でした。どんな続きを見せてくれるのか、続刊が楽しみです。