勇者には勝てない

第18回電撃小説大賞・銀賞受賞作。
魔王とその配下が勇者と激しく争った世界。世界から魔王を追放するために、次元魔法で魔王を他の世界へと追いやった勇者は、魔王を監視すべく自らも世界を離れる。主人公達は、次元魔法に巻き込まれた魔王の配下である三魔将。現代日本人として生まれ変わり、かつての記憶は保っているものの、悪事を働く気は全くない。そんな折り、3人の高校に勇者の生まれ変わりと思われる少女が転校してきて...と言う感じに話が始まります。

面白かったです。元々は大悪魔だった主人公達が、別世界に転生して成長し、普通の高校生として過ごしている。そこに魔族を目の敵にしている勇者の生まれ変わりが現れて、恐怖する...と言う始まりなのですが、肝心の勇者はかつての記憶を失っており、普通の美少女。でもどんなキッカケで記憶を取り戻すか分からないので、主人公達が日常生活をガードをかねてサポートする。普通、異世界から転生したんだ! と言い出せばただ痛い人になってしまうけど、それを逆手に取って、本当に転生した登場人物達だけで話が進むと言う発想が良かったです。
三魔将と勇者が転生していて、魔王が出てこないはずがないよなぁと思っていたら、メチャクチャ意外な人物として転生していたり、勇者の婚約者まで転生していたり...と、予想外の出来事も多く、飽きなかったのも良かった。ヒロインの勇者はひたすら守られるポジションにいるので、1人だけ蚊帳の外に置かれているような状況が多くて見せ場が少なかったのは少々残念でしたが、確かにこの勇者には勝てない。どうやったって勝てない。見事なタイトルだと思いました。